据え膳もないはなし
「好きかどうかなんて、したいと思うかどうかじゃないの」
好きって何だっけ、恋って何だっけ。とぼやいた私に「お前は中学生かw」と笑って、同僚がさらっと言い放った。定時後のフロアで。
マスクの下で盛大に吹いた。ここは居酒屋じゃ、ないんだぞ。そんな大人しそうな顔して真顔で言うことかな。とは言わない。
絶対そんなこと言わないタイプの子だと思ってたのに、斜め上の答えよりも、そんなこと言うなんてな…と、私が凍りついた。寝付くのに2時間かかってたのに、そんなパワーワードのせいで月曜はスヤッと寝てた。寝れた?と聞かれたけど、寝れた、でもちょっともやっとしてる。そんなこと考えたこともなかった。
もうそんなキャッキャする年齢じゃないんだよ、と。いやでも今時の中学生でもそこまで考えなくない??????
と思ってボスに相談したら「お前は高校生か」って言われた。中学生かって言いかけてやめたらしいんだけど、もう同僚に言われてるんで、と伝えたら笑ってた。でも背伸びして取り繕うような恋は恋じゃなくて憧れで、そんなの数ヶ月で剥がれるよ、と呟く横顔は割と凛々しい。さすが妻帯者、言葉が重い。
先輩に相談したら、Googleに聞きなよって言いながら割とまじめに答えてくれた。なんのこった。
事の発端は、日曜深夜に私が急に「好きってなんだっけ」と自問し始めた事なのだけれど、なんだか近頃浮いた話から遠ざかり過ぎたせいで、好き、という感覚をド忘れしたのであった。そこからなのである。
なんで就寝に2時間かかったのかと思えば、不貞寝して寝坊するのかね。朝起きてぎょっとした。
勇気の使い所を見誤った、わけではない、けど、立派な肩透かし喰らったって思い込む程度には、それなりに落ち込んでいる。私ってなんなんだw人を好きになったらダメな体質になっとるんか私はwww
立派でいなきゃ、と、どうにか与えられた仕事をやりながら生き続けるのは限界がある。心のピンヒールはずっと痛い。
でも、たとえば無意識でよ、喜怒哀楽を全面に出していたり、気づいたら隣で眠っちゃってたり。そういう人が隣にいる方がきっといい。私の場合は。
だけどもう傷つきたくないやん。この歳だからゆえの開き直りと、裏側には怖いなってのが同居してる。
だから、好きってことを勘違いしたくないのだ。そういうことか。
などと考えてしまった。ああ仕事やん。