1度のごめんね、のはなし
遠くに行っちゃいたい、と、思い始める。
恋の仕方なんて忘れちゃったよママ。
帰ろうとしたら、上のフロアの先輩に会う。珍しいね、もう帰るの?と笑う先輩と私は、春先のド繁忙期に退館時間を競うぐらいだったんだけどさ、私は夏にかけての閑散期の入り口だったもんで。
早く帰るなら恋愛もちゃんとしときなよ〜!と、実母ですら言わない宿題を言い残して颯爽とフロアに戻っていった。
昨日は妙に風が強くて、すこしひんやりしてて、なんか季節を忘れてしまいそうになって。恋愛の作法もたぶん忘れてしまったな。
私が憧れる人は物理的に遠いし、ただでさえ会える時間も回数も限られていたのに、コロナ禍でほぼ死滅している。なんでウイルスが死滅しないんだろ。はて。
ほんとうに、恋って何だったっけ。
あの人がかっこいいとか、こんな話をして胸がときめいた、とか、そんな気持ちは多分とても昔に置き去りにしちゃったような。はて。
はてな。埋めてはないんだけどな。
500の甘い言葉より、たった1度のごめんね、が、心を打つこともある。
ヒトの心ってわかんない。それでも、そのひとつは、夜空に灯る光みたいに輝いてしまう。私の頭上でずっときらきら。
ありがとう、と、ごめんね、が、言えるうちはきっといい。そんな人と、おはよう、と、おやすみ、が、言えるようになったらきっと幸せ。かもしれないけど、幸せはその人が決めるもんだって何かどこかで読んだね。そういえばね。
距離なんて飛び越えてしまう、とはよく言ったもんで。
でもやっぱり恋の作法を忘れてしまった。大変だわ、どこから思い出せばいいんだろう。と、思った時に、自分はド新規から相手を見つけるのではなく、いま近くにいる人の延長なんだろうな、という変な悟りを開いたのでした。
なんか梅雨の中休み、太陽が眩しすぎてもうほぼ夏。